【文法10】冠詞 + 名詞 の機能

前回は,「冠詞 + 名詞」=「名詞句」の組み合わせについて解説しました。全部で5種類ありました。覚えているでしょうか。

例:book であれば下の5つの形が可能です。
(1) book: 無冠詞単数形
(2) books: 無冠詞複数形
(3) a book: 不定冠詞単数形
(4) the book: 定冠詞単数形
(5) the books: 定冠詞複数形

「形」は上記5種類しかないのでシンプルで簡単ですが,
それが表す「意味」は複雑です。
皆さんも学校の授業や参考書で色々な解説を聞いたことがあると思います。

例えば,go to school の school に a や the がつかいないのは建物としての学校ではなく,「勉強する場」としての意味だからとか,the がつくと「特定」されるなどの解説です。

もちろん,そのような解説は有益です。しかし,一体全体としてどのように冠詞のシステムが機能しているのか,俯瞰するような解説がなかなかありません。

私自身,色々な冠詞についての本を読みました。その中で冠詞を体系的に俯瞰するのに役立ったのが,石井隆之氏の「冠詞マスター教本」という本です。特に終章にある図解は役立ちました。

同書などを参考にして,自分なりに発展させ冠詞を俯瞰したものが下図です。まだまだ改良の余地はあると考えていますが,冠詞の認知システムの枠組みを提示できたと思います。

冠詞 + 名詞 の機能

まず,図の一番上にあるのが「名詞の原形」です。これは辞書の見出しだと思ってください。

そこから,a book 又は books の形になると普通名詞になります。不定冠詞の a や 複数形はその名詞が数えられるものであり,具体性があることを表します。

一方,book そのままの形で不定冠詞がつかず,複数形にもならない名詞(無冠詞単数形)は特殊名詞となります。
特殊名詞は普通名詞と反対にあるもので,数えることができず具体性がありません。特殊名詞には固有名詞,物質名詞,抽象名詞があります。

よく,名詞には可算・不可算(数えられるか数えられないか)があり,book は普通名詞で数えられ,water は物質名詞で数えられないという説明が文法書にあります。
しかし,もともと book は普通名詞,water は物質名詞と決まっているわけではないと考えます。

原則として,あらゆる名詞が可算にも不可算にもなり,普通名詞にも,固有名詞,物質名詞,抽象名詞にもなると考えます。名詞が普通名詞になるのか,特殊名詞になるのか決定するのは冠詞です。冠詞が名詞の状態を決定しています。
確かに,個々の名詞に性格があるのですが,冠詞と名詞の相互関係を理解する時には,もっと大雑把な理解をした方が有益だと思います。

≪まとめ≫
・名詞は普通名詞にも特殊名詞(固有,物質,抽象)にもなれる。
・名詞が普通名詞になるか特殊名詞になるかは冠詞が決定する。

図の下側には 定冠詞 the の表があります。
定冠詞 the は後ろの名詞が単数でも複数でも大丈夫です。
そして,定冠詞 the は名詞が普通名詞の状態であっても特殊名詞の状態であっても,関係なく付けることができます。

定冠詞 the の役割は「指し示す(指示)」ことです。
指示の仕方には3種類あります。
(1) 特定:具体的な本という物体を指し示す場合。「その本」と訳せる。
(2) 総称:本をグループとして指し示す場合。「本というものは」と訳せる。「(一般的に)本(というもの)は紙でできていて,文字が書いてある。」などと言及する場合などに使う。
(3) 機能:本が持つ機能を指し示す場合。
・by the book(規則通りに):本には規則が書かれるから。
・hit the books(勉強する):本で学習できるから。
・one for the book(s)(注目すべき事):本には重要な事が書かれるから。

いかがでしたでしょうか。冠詞と名詞をぐっと身近に感じてもらえたら幸いです。

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